七宝焼(しっぽうやき)、それは高温焼成によって釉薬(ゆうやく)という粉末が化学反応を起こし美しい発色を有するガラス質化された焼物のことで、カラフルな色合いなどを楽しめる金属工芸品のことを指します。
なぜ金属工芸なのかというと、銀や銅板、琺瑯(ホウロウ)の板などの金属板の上にガラス質となるものを形成させていくからです。その焼成を幾度も繰り返し「色」を少しづつ重ねていきます。800℃前後の高温により化学反応が起こり「色」が生み出されるわけですから、一つ一つ風合いが微妙に異なります。
七宝焼のその歴史は古く、一般的な説として紀元前の古代エジプトのあたりが発生地、と云われています。現在では七宝焼は世界中に広まっており、アクセサリーなどに多用されています。
日本へはシルクロードを通って伝わってきた、と云われています。正倉院の宝物(ほうもつ)、つまり御物(ぎょぶつ)ですが、そこにも収められています。以降、皇室の宮廷文化や寺社・豪商の文化的関わりを通して製造の技術の向上が脈々と受け継がれ、特に明治大正時代には外国人技師から得た知識や技術を積極的に作品に取り入れ、数々の世界トップレベルの作品を生み出しました。それらは海外へ輸出され、日本の外貨獲得にも貢献することとなります。21世紀の現在でも、日本の七宝焼は一級品として別格扱いです。「日本の伝統工芸」といわれるのはそういう評価からなのです。
「七宝」の語源は諸説ありますが、仏教の経典にある七つの宝物、①金、②銀、③瑠璃(るり)、④珊瑚(さんご)、⑤琥珀(こはく)、⑥蝦蛄(しゃこ)、⑦瑪瑙(めのう)、に匹敵する美しさから付けられた名称、と云われています。玻璃(はり)や真珠(しんじゅ) 玫瑰(まいかい)をどこかに入れる説もあります。
英語では Hot Enamel(ホットエナメル)、フランス語ではEmail(エマイユ)と表記されることが多いです。Cloisonne(クロワゾネ) と表記されることもありますが、これは「有線七宝」という技術の一つに限定された表記です。Enamel&Cloisonne Wareと表記するのが適切だとする説もあります。